銘柄分析第4弾は、証券コード3658「イーブックイニシアティブジャパン(電子書籍関連)」について分析します。
会社名が長いですね(笑)
以降は「イーブック」と省略させていただきます。
企業概要
イーブックは急速に普及しているスマートフォン・タブレット端末及びパソコン向けに、マンガを中心とした「電子書籍」の販売事業等を行っている会社です。
創業者が出版社勤務時代に、返本の山が断裁・焼却されることに地球環境への影響を危惧し、「SAVE TREES!」を事業コンセプトに打ち立て、電子書籍による解決を目指して設立しました。
2年前から私も漫画や雑誌を電子書籍で買うようにしています。使ってみて思ったのは、いつでも好きな時に読めるし、現物と比べて場所を取らないのが良い点です。
このようなユーザーからの支持もあり、近年書籍市場において電子書籍が急成長を遂げており、イーブックの業績成長を後押ししています。

イーブック決算説明資料より抜粋
事業内容
イーブックは以下の2つの事業が柱となっています。
ebook japan(電子書籍販売サービス)
2018年10月より、ヤフー株式会社(以下、「ヤフー」)と協力して運営する電子書籍販売サービス「ebookjapan」を経由して、国内外の一般エンドユーザーに対して電子書籍の販売を行っています。

イーブック決算説明資料より抜粋
エンドユーザーは自身のパソコン、スマートフォン、タブレット端末等に電子書籍を購入し、好きな場所で好きな時間に、永続的に読書を楽しむことが可能となります。
また、電子書籍販売サービスは、一度獲得したユーザーは定着する傾向が高く、獲得したユーザーが根雪のように積上がっていくストック型の事業モデルとなっています。
エンドユーザーの獲得が成長につながりますが、国内でも指折りのプラットフォーマーである「ヤフー」と協業しているため、PayPayボーナスの還元キャンペーンも多く行っており、ユーザー数は前期・今期と急増しています。
bookfan(紙書籍オンライン販売)
紙の書籍をインターネット経由で販売するオンライン書店を運営しており、その売上については、クロスメディア事業に計上しています。

イーブック決算説明資料より抜粋
1冊から送料無料なものもあることや、電子書籍同様PayPayキャンペーンを開催するなど、業績は成長しています。
財務分析
諸基本データ
株価の他基本データおよび最近の株価チャートを以下に示します。
・時価総額 153億円
・PER(予) 23.5倍
・PSR(予) 0.6倍
・ROE 12.4%

株探から引用
この株価上昇は、電子書籍業界がコロナ渦のテーマ株として躍進したのに加え、2019年頃からヤフーと協業して、PayPayのキャンペーンを実施し、ユーザーを獲得した結果が現れたものと考えています。
しかし、テーマ株の人気が落ちたのと同時に株価は下降の一途をたどっています。
最近は少し反発の兆候も見受けられ、現在の評価と今後の目標株価については以降でお話させていただきます。
業績(評価〇)
至近年の業績および来期の業績予想は以下の表のとおりです。

イーブック決算説明資料より抜粋

株探より引用
前期(2020.3期)は売上が50%程度成長しました。これは①諸基本データで述べた通り、ヤフーとの協業が影響しています。
今期もその影響は継続して、順調に売上を積上げており、3Qでの売上進捗率78%、当期利益進捗率94%と高進捗を見せています。
また、下の表のように、昨期の四半期毎の業績を見ると、第4四半期の売上が通期の中でも大きい割合を占めており、売上や利益は予想を超えてくることが期待されます。

株探より引用
今期の第4四半期は「LINEとヤフーの統合」によりPayPayキャンペーンを多く開催しており、特に期待が高いため評価は〇とします。
配当(評価×)
配当実績はありません。成長企業であることを考えるとこんなものかなという感じです。
今期EPS予想が約120円であることから、今後順調に利益が成長していけば配当も考えられますが、現段階では評価は×とします。
B/S・自己資本比率(評価〇)
B/S表は以下になります。

イーブック決算説明資料より抜粋
流動負債に対して十分な流動資産を保有しており、短期的な支払い能力に問題はなく、自己資本比率も41.7%と高い値となっています。
また、電子書籍を販売するため基本的に実物の在庫を保有せず、売れた分だけ版権使用料が原価としてかかるため、価格が安定している書籍販売事業では基本的に販売価格が原価を割ることはないといえます。
これは裏を返せば、原価はこれ以上削減できず大きく利益は上がらないということですが、売上の成長と共に着実に利益が積み上がるビジネスモデルであるといえます。
さらに、下の表のように現在は広告宣伝等の販管費が多くなっていますが、多くのキャンペーンを実施して売上拡大をしている最中であり、今後キャンペーンが落ち着けば利益率の上昇や自己資本比率のさらなる向上も見込めるでしょう。
よって評価は〇とします。

イーブック決算説明資料より抜粋
今後の業績について
私は最近書籍を店頭で買うことはなく、雑誌は他社の定額の読み放題サービスを使用し、漫画はイーブックで電子書籍を購入しています。
個人的な感想としては、いつでもスマホやタブレットで本を読むことができ、キャンペーン等で割安に購入できるのは魅力的で、一度電子書籍で買い始めると、ユーザーが定着しやすいというのも納得できます。
そういった意味ではストック性もある事業であり、今後市場が拡大していく中では少なくとも後退はなく、成長を続けるグロース銘柄といえます。
昨期(2020.3期)は4Q売上が他の期を大きく上回っており、昨期を例に今期4Q(2021.3期)の売上を80億円(3Q比+5億円)と想定し、今期4Qをベースに来期を計算すると、通期売上は320億円(売上成長なしと仮定)となります。
また、市場予測の2021年度成長率が8.3%であることから、来期(2022.3期)4Q売上が約87億円に成長するとすると、通期売上は333億円となります。
今期のイーブックの売上成長率は、市場予測の電子書籍成長率(2020年度)を上回っていることから、来期の成長率もイーブックが上回る可能性があり、さらなる売上増加も見込まれます。
来期(2022.3期)売上想定が333億円の時、2020.3期の売上に対するEPSから来期EPSを計算すると153円となり、PER20倍とした時の予想株価は3,060円となります。過去平均から見るとPERは概ね25倍であることから、レンジは3,060円~3,830円を予想します。
まとめ
今回は電子書籍市場の発展と共に成長している「3658 イーブック」を分析しました。
最近LINEと統合したヤフーと提携しており、PayPay還元キャンペーンを定期的に実施して、顧客獲得を続けています。
電子書籍は複数のサービスを跨いで購入するよりも、1つのサービスで購入し1つの本棚に集約した方がユーザー的に管理しやすいため、獲得したユーザーはストック性があります。
一時のテーマ性が落ち着き株価は下落が続いていましたが、最近回復の兆しを見せており、順調な業績をバックに株価の漸進を期待します。
市場の成長率に沿って業績が成長すると想定し、PER過去平均から株価を予想すると3,060~3,830円あたりを目安として上昇を期待したいと思います。
投資はご自身の判断で!
今後も定期的にグロース銘柄について分析していきますので、ご興味がある方は来訪お待ちしております。
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